特定の場所にマウスを重ねるかクリックすると,反応して何かが現れます.

書き方の説明書も参考にしてください.サンプルもいずれ追加予定です.

連絡先:elastic [at-mark] i3vi3 [dot] xyz

定義 1.1

整域とは,零環ではない可換環のうち,$ab=0$ を満たす任意の元 $a,b$ について $a=0$ か $b=0$ が成立するものをいう.
たとえば,はすべて整域である.
これを示すために,体の 2 元 $a,b$ で $ab=0$ を満たすものをとる.$a=0$ か $b=0$ であることを示そう.$a\neq 0$ であると仮定して $b=0$ であることを示せばよい.この仮定の下で $a$ には逆元 $a^{-1}$ が存在するので,$b=(a^{-1}a)b=a^{-1}(ab)=0$ が成立する.
また,有理整数環 $\mathbb{Z}$ は,でない整域の例である.整域の重要な例は,函数論にも自然に現れる.
たとえば,複素平面 $\mathbb{C}$ 上の正則函数全体のなす環 $\mathscr{O}(\mathbb{C})$ は整域である.
($f, g\in\mathscr{O}(\mathbb{C})$ に対してその和 $f+g$ と積 $fg$ は,それぞれ $(f+g)(z)=f(z)+g(z), (fg)(z)=f(z)g(z)$ で定義している.これらは正則函数なので $\mathscr{O}(\mathbb{C})$ 上の演算を定め,可換環の公理を満たす.)
これを証明するため,$\mathscr{O}(\mathbb{C})$ の 2 元 $f, g$ で $fg=0$ を満たすものをとる.$f\neq 0$ を仮定して $g=0$ を示そう.$f(z_0)\neq 0$ となる $z_0\in\mathbb{C}$ を固定すると,$z_0$ の開近傍 $U$ を $\forall z\in U, f(z)\neq 0$ が成立するようにとれる.
(たとえば,$f(z_0)$ を中心とする半径 $\frac{f(z_0)}{2}$ の開球 $V\subset\mathbb{C}$ をとれば,$f$ の連続性により $U=f^{-1}(V)$ が条件を満たす.)
このとき,仮定により $\forall z\in U, g(z)=0$ だから,一致の定理により $g=0$ である.
本章の目的は,有限整域,すなわち整域のうち台集合が有限集合であるものの研究である.

定理 1.2

有限整域である.
証明:有限整域 $A$ について,$A$ がであることを示す. $A$ の 0 でない任意の元 $a$ をとる.$a$ の逆元が存在することを証明したい. そのためには,写像 $f\colon A \to A; x \mapsto ax$ が全射であることを示せばよい.
なぜなら,これが全射であれば $f(b)=1$ を満たす $b\in A$ がとれるが,この $b$ が $a$ の逆元となっているからである.
($f$ の定め方から $ab=1$ であるが,A整域であり,従って可換環だから $ba=1$ でもある.)
ところが,$A$ は整域だから $f$ は単射である.
これを示すために,2 元 $b, c\in A$ で $f(b)=f(c)$ が満たされるものをとる.すると,$ab=ac$ すなわち $a(b-c)=0$ が成立する.$A$ が整域で $a\neq 0$ であることから,$b-c=0$,従って $b=c$ が成立する.これで $f$ の単射性が示された.
また,$A$ は有限集合だから $f$ は全射でもある.(証明終)
なお,有限体の理論の研究は読者に任せる.