これを示すために,体の 2 元 $a,b$ で $ab=0$ を満たすものをとる.$a=0$ か $b=0$ であることを示そう.$a\neq 0$ であると仮定して $b=0$ であることを示せばよい.この仮定の下で $a$ には逆元 $a^{-1}$ が存在するので,$b=(a^{-1}a)b=a^{-1}(ab)=0$ が成立する.
たとえば,複素平面 $\mathbb{C}$ 上の正則函数全体の
なす環 $\mathscr{O}(\mathbb{C})$ は
整域である.($f, g\in\mathscr{O}(\mathbb{C})$ に対してその和 $f+g$ と積 $fg$ は,それぞれ $(f+g)(z)=f(z)+g(z), (fg)(z)=f(z)g(z)$ で定義している.これらは正則函数なので $\mathscr{O}(\mathbb{C})$ 上の演算を定め,可換環の公理を満たす.)
これを証明するため,$\mathscr{O}(\mathbb{C})$ の 2 元 $f, g$ で $fg=0$ を満たすものをとる.$f\neq 0$ を仮定して $g=0$ を示そう.$f(z_0)\neq 0$ となる $z_0\in\mathbb{C}$ を固定すると,$z_0$ の開近傍 $U$ を $\forall z\in U, f(z)\neq 0$ が成立するように
とれる.(たとえば,$f(z_0)$ を中心とする半径 $\frac{f(z_0)}{2}$ の開球 $V\subset\mathbb{C}$ をとれば,$f$ の連続性により $U=f^{-1}(V)$ が条件を満たす.)
このとき,仮定により $\forall z\in U, g(z)=0$ だから,
一致の定理により $g=0$ である.